(表紙下描き)
報瀬誕2022ゲームブック「プレゼント・デイ」のプリント&プレイありがとうございました! 本作は宇宙よりも遠い場所(よりもい)好きのひとが作ったよりもい好きのひと向けのゲームブックでした*1。
よりもい好きのひと向けということで、ゲームブックではアニメ本編等とリンクした要素がいろいろありました。この記事では、どういうリンクがあったのか(あるいはないのか)という話を解説しておきたいと思います。ラベル(パラグラフ)順に説明してゆきますので、未プレイの方は以下プレイされてからのほうがよいかなーと思います。
序
よりもいの本編以降の物語を想像するとき、彼女たちが10年もしないうちに検討するであろう入学・卒業・就職に関すること、そして、短い間ながらも濃密な時間をともに過ごした南極チャレンジのみなさんとの関係がどうなったのかをいろいろ思いめぐらせます。
あのとき南極ゆきの観測船に乗ったみんなは、もともと居場所も年間の予定もあまり一致しそうにない、ばらばらカルテットどころかばらばらチャレンジなメンバーで、だけどあの旅に賭ける気持ちは同じだった、そして予算的な条件も機会も揃った、そういう一期一会な旅だったと思うのですよね。
以前の同人誌で小説を書いた時には、関係者のうち誰がいつどの場所に居ることができるのかを決める必要があって、南極チャレンジのその後について楽観的に考えた場合の年表を作りました。民間観測隊という本邦で実際にはない事業の3度目以降はどうなるのか、お金も人員も限られるなか、国の観測隊のように毎年出航できないにせよ、とんとん拍子に進むとすればどういう計画があり得るのか・・。
居場所の問題については例えば、越冬中のみなさんは11月には昭和基地におられます。すると、報瀬さんが館林で誕生日11月1日を迎えるとして、越冬中のみなさんは館林に居ることができません。逆に報瀬さんが昭和基地で越冬しているとすれば、どういうわけで越冬しているのか、そのとき誰がそばにいるのかを考える必要があります。少なくともアニメ本編の四人は春先にペンギン饅頭号で日本へ帰還して、南極チャレンジメンバーの多くは越冬中のため、その年の報瀬さんの誕生日に日本にいるメンバーは限られてます(名前のある人物では迎船長のみのはず)。いっぽう、いまはビデオ会議があるのでコミュニケーションには困らないかもしれません。
年齢も職業も立場も違って、それぞれに迎える節目、進む道があって、変え難い年間予定のなかで南極に行ったり行かなかったり、もしかしたら南極チャレンジも順風満帆でなくみんな暇をしている時期があるかもしれない・・まぁ、人生いろいろありますけども、かれらにまた一緒の時間を過ごせる機会があればなぁと思うのでした。
なので、前回はかっちり年表まで作りましたが、いっそ何も決めず、いろんな年の、いろいろありえた報瀬さんのお誕生日を集めて1つの本にしてみてはどうか、というのが今回の試みでした。タイトルは「プレゼント・デイ」で贈り物の日という意味ですが、現在の日、という意味も同時に込めています。本編でのあの旅を過去とするとき、年表で未来を1つに決めてしまうのではなく、全てを現在のこととして開いておきたい気持ちでつけました*2。
序に【コンパサー】キマリさんが登場するのはアニメ本編のキマリさんに敬意を表しました。キマリさんがいなければあの物語は導かれないのと同様、このゲームブックもキマリさんがラベル(ゲームブックにおけるいわゆるパラグラフ)を付けていなければ手に負えないばらばらな断片となってしまいます。
この本が二分冊で館林編と東京編に分かれたのは予定外でした。話の構成としては元々そうなっていましたが、分量的にもちょうど同じだったので場所でわけることを思いつきました。仕掛けとして良くなりましたし、作るうえでもパラグラフのシャッフルが楽になりました。
さて、物語は11月1日に報瀬さんの誕生日を控えた10月から始まります。何年の10月に起こった出来事かは判りませんが、ばらばらに追いかけてゆきましょう。
最初の選択肢を除いてセリフには人物名をつけました。紙面が足りず、地の文とセリフだけで誰が話しているかを示すのが難しかったためです。最初くらい名前なしでやろうと思って書きましたが、それぞれ誰だか判りますでしょうか?
「南極関係のなにかが良いでしょうか」【G1へ】
「報瀬の好物といえば、柿の種だな」【G2へ】
「ペンギン!」【G3へ】
【G1】
彼女らがプレゼントに模型を選ぶという発想があるのか?とは思いましたが、あの旅の資金源のひとつとして七神屋ペンギン饅頭号バージョンのしらせ模型が発売された、という妄想が去年の報瀬誕イラストを描いたときからあったので、それをそのまま持ってきました。これは完成済みモデルのつもりでしたが、わたしが数ヶ月前から自分で立体物を作り始めた影響でプラモデルとなりました。
そもそもはよりもいファンのみなさんがフルスクラッチやプラモ改造でペンギン饅頭号(しらせ)を作ってこられたことにも影響を受けていると思います。
【G2】
報瀬さんの好きな食べ物が柿の種だという様子はアニメ本編に出てきませんが、公式設定でそうなっているのを反映させています。
プレゼントに柿の種だけというのはあんまりだといって、キマリさんがもうひとつ別のものを用意するよう提案してくれました。
【G3】
報瀬さんがむちゃくちゃペンギン好きだというのはアニメ本編のとおりです。
ゲームブックに登場するペンギンは、キマリさんの部屋にあるぬいぐるみのペンギン(青)やキマリさんがペンギン饅頭号にもちこんだ色違いのペンギン(ピンク)と同じ種類です。ピンクのペンギンは報瀬さんが室内でずっと抱いて離しませんでしたね*3。
ピンクの子はまつげがあるなど、色のほかにも細かな個性があります。このペンギンたちはのちに2021年の南極観測船しらせ出港カウントダウンミニ物販イベント用に描き下ろされたイラストの中で、他にもいろんな種類のある様子が描かれました。
ゲームブックで同じシリーズのペンギンのぬいぐるみがたくさんあるよう書いたのは、こうしたことを反映させました。どのペンギンの話をしているのか思い出していただくために、表紙にもペンギンを描いておきました。これはまつげがないタイプです。
【G4】
最終的にどんな味の柿の種にするか思案したのですが、ふとクールミントガムに思い当たりました。ギャグです。あと、クールミントガムの元になったのはロッテが作った南極観測隊用のガムでしたので、小ネタとして盛り込みました。ガムのパッケージはペンギンの絵でおなじみですね。クールミント柿の種はロッテとのコラボ商品だとすると包装にペンギンの絵が描かれているかもしれません。
ガムの豆知識|ガムタウン|工場見学・学ぶ|お口の恋人 ロッテ
【G5】
吟さんからもらったぬいぐるみを何色にするかはだいぶ悩みました。プレイヤーの選んだ色と被らなさそうな色かつ動物ぬいぐるみの定番の色として「ねずみ色」にしました。
なんとなく報瀬さんには「グレー」ではなくて「ねずみ色」と言わせたかった。おばあちゃんがそう言ってそうなので。
【G6】
こちらはわたしが描いた去年の報瀬誕のイラストにつながるENDです。当時はここまで具体的に決めて描いたわけではありませんでしたが、ゲームブックを作ってるうちに、これはそういうことだったのかも、と思うようになりました。
【G7】
ペンギンの数や色でENDの様子が変わるようにしようと思って、いろいろ想像してみました。報瀬さんがベッドに入ろうとするときにもピンクのペンギンを放そうとしなかったのはアニメ第7話で描かれているとおりです。ペンギンがもしも二羽いたら、こんなふうにして寝ておられるかもしれないと思って書きました。
【G8】
南極チャレンジのみなさんとのその後を書いたENDです。順風満帆で忙しそうな未来は小説で書きましたので、それぞれの未来を生きつつ、南極へゆく機会も伺いつつ、ときどき理由を作って旧交を温めてる、みたいな感じです。
保奈美さんがこういうの得意そう、というのは眉毛を描いてた作中の視点もありますが、若い子寄りの感性を持っておられて「キマリたちと一緒に遊ぶことも」と公式設定にある印象を元に書きました。敏夫さんがはじめたことですが、熱心に通って取り組んでそうなのは保奈美さんかな、という感じです。
【G9】
アイスオペレーションで通じるかな、とは思いましたが、第13話に出てくる氷を取りにゆく作業です。報瀬さんがペンギンに囲まれるやつですね。
【東京編(T)表紙】
続いて東京編です。館林(TATEBAYASHI)編をTにしたかったのですが、東京に当てる適切なアルファベットが他になくてこちらをTにしました。【館1】【東1】にすれば解決だったといまになって気づきました。
表紙のライオン像はアニメ第2話に出てくる新宿東口のライオン像です。「群馬だってバレる」の場所ですね。
(ライオン像下書き)
【T1】
東京でどこへ立ち寄るかを選ぶ箇所です。
南極チャレンジのメンバーと会う機会を作りたかったのですが、よく考えるとどこにゆけば会えるのかアニメ本編の情報だけでは判りません。
第4話で立川から出発するので極地研のある立川で会えるように設定を考えようかとも思いましたが、今回は組織がどうとか年表みたいなことを厳密に決めるのはやめようという主旨だったので、どちらかというとギャグとして「南極チャレンジ事務所」を選択肢に追加しました。「そんなんないやろ(笑)」と思って選んで頂ければ正解(?)です。
【T2】
雑貨屋さんでの分岐です。どこでフラグが立つのかすぐには判らない書き方になっています。
【T3】
模型屋さんでの分岐です。どちらが正しいということはなく、ゲームとして敏夫さんと会う流れは難しいようにしてみました。
【T4】
南極チャレンジ事務所は作中に登場しない場所ですので、いったいどこにあるのやらよく判らない形で到着します。
立川の極地研の一室を民間で借りてるというくらいのことはありそうですが、今回はマンションの一室を借りているか、最も厳しい場合は個人宅を事務所と称してるか、というくらいのイメージで書きました。
熱いお茶を出してくるのは報瀬さんのおばあちゃんの流儀で、あのお家へ出入りしていた人は熱いお茶を出すようになってしまう、みたいな感じにしています。
挿絵のとおりピンクのぬいぐるみにはまつげがあって、報瀬さんが船内で抱いていたキマリさんのぬいぐるみと同じものです。報瀬さんがペンギンを抱いて油断している姿はどこかで吟さんに見られていたかもしれない、という想像の元に書いた展開です。ただ吟さんとしてはぬいぐるみが誰のものかまでは判らなかったので、報瀬さんと同じピンクのペンギンは自分用に買って、報瀬さんには別の色のペンギンをプレゼントしています。
【T5】
わたしとしては当初、柿の種だけをプレゼントにするつもりでしたが、キマリさんから異論が出たため別の展開を考える必要が出てきました。柿の種の形のクッションというのはだいぶ後のほうで出てきた発想でした。
【T6】
同じ種類のペンギンのぬいぐるみが幾つもある、というのは【G3】で書いたとおりです。公式の色としては青とピンクしかでていませんが、他の色があっても良いのではないでしょうか。ここはいろいろ想像して頂ければ、ということでした。
【T7】
人の気持ちに繊細な日向さんを描いておきたくて追加した一幕です。とはいえ悩みを抱えたまま進んでもらうのもなぁ、と思って、日向さん自身にも逆転の発想をもってもらいました。
【T8】
宗谷のプラモデルに定価7,480円のものがあって、なんとなく同じ価格にしてみました。
【T9】
東京でキョロキョロしていると群馬だってバレますね(第2話)。しかしキョロキョロしていればこその出会いもある、みたいな。
わたしが敏夫さん好きなので、なにかと登場しがちです。このゲームブックは結月さんの視点をお借りしていますので、結月さんが財前敏夫さんのことをどう呼ぶのかを決める必要がありました。作中ではお名前を呼んでないと思います。
ここではまだあまり打ち解けてないということで《財前さん》となっています。
友達へのプレゼントは彼女らから見て距離のある敏夫さんのような人が口をだす話ではないかもしれませんが、敏夫さんならつい言っちゃうかもしれないな、というのと、ゲームブックですのでそういう展開があっても良いかなと思いました。
以上となります。
この本はネットプリントですが、わたしの同人誌という形でリリースしました。コミケの開催が不安定だったこととわたしが東京を離れたことでしばらくよりもいの同人からは離れていたのですが、ネットプリントならば欲しい方には必ずお届けすることができると思ってやってみました。
手に取って頂いたみなさま、最後までプレイしてくださった皆様に改めて御礼もうしあげます。
2022年11月27日 ソガ