疏水分線

ソガ/疏水太郎のブログです。

ひといきの漫画

さて、夜闇にまぎれて今年あらたに読んだ漫画で好きな作品の話をしてゆきます。

 

加藤 龍勇「Scar Face」1-6巻

加藤さんの漫画の境地に至れるなら今の自分の絵などはぜんぶ投げ出してよいと思われるのですが、覚束ないまま明後日の方向を向いて絵を描いている次第です、

だけど、時々まねしようとしてみたり。

 

Scar Face では特に美少女と猫、音楽そしてSFという初期短編作品の諸要素を見つけられることも楽しみでした。それでいま改めて思ったのは、近年の長編作品では漫画の姿も変わってきてたのだなぁということ。読んでいてロングトーンを感じるんです。一息が長い。

 

漫画からコマ割りがなくなって、フルカラーのページを1枚ずつめくってゆく形になったのが見た目における明らかな変化です。コマがリズムを生み出すのではなく、1ページが1つの拍を生み出して1つの巻を構成する270ページを一気に吐き出しています。

加藤さんの漫画において音楽が世界の核心であることはモチーフであり続けていますが、いまは絵も言葉も音楽的なものと一体になりつつあるのをこのロングトーンについて感じています。人物と環境は半ば溶け合いながらも確かなエッジをもって連続し、言葉は明確に置かれて、独り言やふたり言を時にまくしたてる、そこに拍があって、拍を追いかけるときに感じる長い一息のような持続性は、たぶんわたしが息を止めるようにしてこの漫画を読んでしまうことと呼応しているように思われます。