枕元のチッピー
よりもいギャグ小説「南極たぬきねこ」の別ENDです。
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「ペンギン饅頭号の元々の名前はしらせね。由来は知ってる?」
吟隊長の問いに答えたのは報瀬ちゃんでした。
「日本人で初めて南極へ到達した、探検家の白瀬矗です」
「白瀬が活躍した時代には、南極を目指す冒険者が沢山いた。その中でもイギリスのアーネスト・シャクルトンの冒険は広く知られているわ。シャクルトンの探検隊は氷に閉じ込められて、船を失い、だけど2年近くかけて全員が生きて帰ってきた。そう、少なくとも、人間はみんな生きて帰ってきた」
「だけど、虎猫のミセス・チッピーは帰ってきませんでした。南極脱出の旅には連れてゆけないので、犬たちと一緒に殺された」
「そうね。でも、シャクルトンの判断は正しかったし、隊員全員を生還させたのは偉業だったと思うわ」
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「納得いかないー」
その夜。私はミセス・チッピーが死んだこと、チッピーと仲良しだったマクニッシュさんのことを思って怒っていました。
「ミセス・チッピーのこと、おはなしにしようと思う。マクニッシュさんと結婚するの」
「でもミセス・チッピーってたしか雄猫だわ」
「えーっ、なんでー」
「うーん、夫婦に見えるくらい仲が良かったんじゃないですか」
「じゃあ、ミセス・チッピーは毎晩、シャクルトン隊長の枕元に立ってるの」
「怖いな、おい」
「そしてこう言うの。ちゃんとお世話できないのに南極に動物を連れてきちゃダメにゃん、って。それ以来、南極には動物を連れてきちゃいけないことになったのでした」
「あまり怖くないですね」
「だけど動物が駄目なのはそういう理由じゃない」
「確かに南極条約とは違うが、そういう気持ちにもなるよな。タロとジロ思い出すと」
「今日の幽霊のことでもやもやしてるのをほっとさせたい気持ちがあって、なにかお話にすると良いなって」
「キマリさんは、そういう風にお話を書くのが向いているのかも知れませんね」
(南極たぬきねこ・小説家エンド)