飛躍のある話を持ち出す際には手当てをするのが心配りというものです。冒頭、別の世界へ誘う場面での
「この世界を救ってほしいのです」
というにわかに呑み込めない言葉も、チィがピポを突っつくカットによって深刻にならないよう手当てされていることが判りました。そんな風に筋や言葉のゆるい部分を映像に語らせてひとつひとつ支えてゆく手つきがとても丁寧な作品だと思いました。
しかし、これほど手当てを積み重ねてまで辿り着きたかった無理のない場面がいつ訪れるのかな、と息を呑んで待っていたところ、息の詰まったまま終わってしまいました。
見終わってから、原作の「地下室からのふしぎな旅」を読みました。原作の筋に難がある箇所を映像で頑張って支えようとしていたものと予想したのですが、そもそも全く別のお話でしたので、アニメ版は自分で点けた火を自分で消して回っていたようです。
なお、原作とアニメ版とが違い過ぎるため、特に比べる意義は感じません。原作の感想は前の記事で別途書きました。
2019年4月29日 疏水太郎