生き物はおよそ小さく生まれて大きくなります。この量的な、あるいは質的な増加関数は成長と呼ばれ、広く祝福されています。
ただ、生き物はそう単純に右上がりじゃないので、成長という言葉がぴんとこないこともあります。私はそういうとき《成長した》ではなく《変化した》と思うことにしています。
よりもい第13話について。
結月「なんか、わたしたちちょっぴり強くなりました?」
報瀬「もしくは雑になったっていうか」
友達ができて幸せの真っ只なかの結月さんはうかつに増加関数を持ち出すのですが、そこはこれまで普通の学校生活を積み重ねてはこなかった報瀬さんが軽く抑えてくれています。成長という考えは階段を一歩登れましたという程度の当たり前みたいな喜びのなかにあって、だけどそれは報瀬さんやおそらく日向さんにとっての当たり前ではなくて、違った世界が見えていることでしょう。
強くなることと雑になることはある面で似ていて同じことを言ってるように聞こえるかもしれませんが、あえて別々に挙げていること、そしてそれを誰が言ったかということには特別な意味を感じます。
成長の甘美な喜びを求める人にとっても、変化のなかをどうにか生きている人にとっても、どちらでも受け入れやすい総括をここで書けるのは、脚本の白眉だと思います。
「もしくは」としている点にも心配りを感じます。
当たり前のことが当たり前のようにゆかないことが当たり前でありますように。