宇宙よりも遠いファンタスティック(前編)
アニメ「宇宙よりも遠い場所」(よりもい)の幻想的な描写が好きです。
宇宙というタイトルや南極という目的地から連想されるほどにはアニメ本編は私たちが抱えている日々から離れないし、どちらかというと人の言葉や行動で前進する話なので、本作品の幻想性というのは要所でスパイスを効かせてあるくらいなのですが、私がよりもいのこと単にむちゃくちゃいい作品だなーと思う以上に自分のお気に入りの作品となってるのはそこなので、そういう話をしたいと思います。
えっと、あともう少し言い訳めいたことを書きますが、よりもいは割と執拗にここで描かれていたことはあそこにあったという照応があるタイプの作品で、まずはそちらを追いかける楽しみが充分に用意されています。いしづか監督が次のようにアピールされていることも、実際、作品へ素朴に反映されているように思われます。
いしづか「2回見ることを大前提で作っていたりします。もう一回見たときに気づいて欲しいな、というアドリブを各所に入れています。(中略)皆さん、見返すと、きっと楽しいですよ!」
(ウルトラジャンプ2018年4月号インタビューより)
よりもいが作品の全体としてまず面白いと思えるのに加えて、そのうちの細かい照応だけでも探しきれないくらい出てきますので楽しみは尽きないのですが、それはそうとして、作品をなぞることからは少し距離を置いた、個人的なお気に入りにも触れたいと思います。
文章でなく絵を描いて思うこととしても、よりもいに関してはなるべく作中の絵や設定をなぞるようにして、プロップデザインの細かさもこの作品の魅力であるし、またこのときはどの衣装であるべきかとか、結月さんの二重まぶたはどうあるべきかとかを考えて描きたいときもあるし、そうでないときもあります。同じ第3話の夢の場面でも、次の3枚の絵を描いていて、それぞれどういう風に描きたかったという気持ちが違っています。
①
①こちらは第3話の場面そのものをなぞりつつ説明したかった絵ですね。絵の右下にコメントも書いています。
②
②こちらは作中の夢が友達との出会いに関わる様子を、第3話を意識しながらも具体的な場面とはやや切り離して描いた絵です。
③
③こちらは一部の要素だけは第3話が参照されていますが、私の好きな物しか描いてないぜ!という絵です。星が散らばってるのとオレンジ色と、ぐにょーんと伸びた腕が私が好きな物を詰めた結果ですね。
よりもいは①のようによりもいの世界をなぞっていってもずっと面白く描き続けられるし最初はそうしていたのですが、ちょっと②とか③みたいな、そこにないけど私が見るものも色濃く描きたくなってきました。
よりもいのようにシリーズとして練り上げられた構成や演出の良さがありつつ、作品内の照応や作品外の参照も細かいというサービス精神あふれる作品と対面したときに、絵にしても文章にしても、そこから離れてゆくスタイルはどうかな、なんかもったいないとか、なんだこれ、という気もしましたので、ついてはどういうことを思いながら描いてるか/書いてるかの補足でした。真芯を外したところでも私にとってはホームランでして。
さて、大切な脱線が終わりましたので、(後編)ではようやくよりもいのファンタスティックの話を始めます。